腱を切って4ヶ月──曲がらない中指が動き始めた症例

以前のことになりますが、
お招きいただいた小笠原父島で、
ご紹介者の奥さまへ施術をさせていただいた症例をご紹介いたします。

奥さまの中指は、4ヶ月経ってもうまく曲がらない状態でした。

その夏、ご自宅でガラスで手を切ってしまったのがきっかけだったといいます。

小笠原は本土から船で片道24時間。
専門医のいる病院もなく、
傷を負ったまま一週間を島で過ごし、
それから都内の病院に向かわれたのです。

診断は「中指屈筋腱断裂損傷」。

すぐに入院・手術となりました。

腱断裂の手術は受傷直後がよいとされていますが、
それでも腱はなんとかつなぎ直されたのです。

ただ、医師からは「リハビリは3ヶ月。
場合によっては再手術が必要」と告げられたといいます。

しかし生活の拠点はあくまでも小笠原。

長期入院は難しく、
奥さまは1ヶ月でいったん島に戻り、
ご自身でリハビリを続けてこられたのです。

そうして4ヶ月。

中指の先端、DIP関節と呼ばれる小さな関節がほとんど曲がりません。

中指屈筋腱断裂損傷手術後の鍼施術前

鍋やフライパンを持つ何気ない動作にも、
ずいぶん苦労されていたといいます。

「もう一度手術を」と勧められても、できればそれは避けたい。

そんなご心境で、施術を受けてくださることになりました。

ここで当院がいつも大切にしているのが、
いきなり患部だけを施術しないということなのです。

身体は一つにつながっていますから、
いくら指だけを追いかけても、
全身の流れが整っていなければ修復はなかなか進まないのです。

ですからまずは、
五臓六腑の経絡エネルギーを全身ぶん整えていきました。

そのうえで、次は筋肉反射テストの出番です。

「指のこのあたりでしょうか」
「もう少し前腕寄りでしょうか」と、
ひとつひとつ身体に聞きながら、
その日この方の身体にいちばん必要なポイントを絞り込んでいくのです。

「なんとなく」「経験で」ではなく、
その都度身体に聞きながら進めていく。

これが、えんどう治療院の大切にしているところなのです。

そうして指から前腕にかけて、
必要なポイントへ鍼で刺激を届けていきました。

施術時間はおよそ1時間。

施術前、ほとんど動かなかったDIP関節が──

その場で、目に見えて曲がるようになっていったのです。

中指屈筋腱断裂損傷手術後の鍼施術後

奥さま自身も「あら、曲がる!」と驚かれていました。

もちろん、腱の修復そのものは時間のかかる過程です。

完全に元通りにするには、
これからの暮らしの中で身体の使い方を取り戻していく必要があります。

そこで施術のあとには、
ご自宅でできるタッチフォーヘルスの「ゴルジ腱テクニック」をお伝えしました。

これは関節まわりの感覚を整えて、
本来の動きを取り戻していくセルフケアなのです。

今回の症例であらためて感じたのは、
身体には自分自身を修復していく力がもともと備わっている、ということでした。

その力が十分に働いていない時、
何らかの理由でブレーキがかかっているのです。

そのブレーキを外していく手助けをするのが、
私たち鍼灸師の役割だと思っているのです。

部分だけでなく全身を整え、
その日の身体に合わせて施術を組み立てていく──。

「あちこち治療を受けてもよくならない」
「もう一度手術しかないと言われた」

そんな時こそ、一度全身を診させていただくことで、
思いがけない変化が起こることがあるのです。

お困りの方はぜひ一度、ご相談いただけたら幸いです。